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重粒子医科学センター

がんは単に治りさえすれば良いというものではなく、患者さんの社会復帰を充分に考えた、臓器や体の形を可能な限り損ねない治療が望まれています。重粒子線による最先端の放射線治療は、患者さんの身体的負担の少ない、人に優しい治療法として大きな期待を担っています。特に難治性のがんに対して高い治療効果が認められ、厚生労働省によって先進医療に承認されました。この分野を主導する研究機関として重粒子医科学センターでは、治療法のさらなる高度化と全国的な普及を目指した研究開発に取り組んでいます。

重粒子医科学センター センター長 鎌田 正

組織図 病院 臨床治療高度化 研究グループ 診断治療高度化 研究グループ 次世代照射システム 研究グループ ゲノム診断 研究グループ 粒子線生物 研究グループ 先端遺伝子発現 研究グループ

■ 放医研の実績をもとに開発された最先端の放射線がん治療装置

放射線医学総合研究所 (放医研) がエックス線やガンマ線等によるがん治療を始めたのは、1961 (昭和36) 年に遡ります。以降40数年、その実績は国内のみならず海外でも高く評価されています。特に、サイクロトロンを用いて1975 (昭和50) 年から開始した速中性子線治療や、1979(昭和54)年から開始した陽子線による粒子線治療は、従来の放射線 (エックス線、ガンマ線) 治療ではなかなか効果のあがらなかった一部のがんに対して優れた治療効果を見ることができました。

しかし、速中性子線や陽子線を用いても治療の困難ながんについては、速中性子線の持つ高い生物効果と、陽子線と同様のシャープな患部集中特性を併せ持った、新たな粒子線による治療を開発することが重要な課題となっていました。

そこで放医研では、これまでの研究成果を生かして重粒子線の医学利用を推進することとし、そのために必要な世界初の医療用重粒子加速装置 (HIMAC) を建設しました。重粒子線がん治療は、1994 (平成6) 年の治療開始以来、2,600名を越える登録患者数の治療を終了 〈2006 (平成18) 年3月末現在〉 し、放医研の第一期中期計画下である2003 (平成15) 年10月には、厚生労働省によって先進医療に承認されました。現在、治療法の全国的な普及を目指した普及用小型装置の建設を推進する新たなステージに立っています。

■ 抵抗性の強いがん、深部のがんに効果が期待できる重粒子線

より良い放射線治療のためには、まず治療効果の高い放射線を用いなければなりません。治療効果を示す指標として、生物学的効果比 (RBE) と酸素増感比 (OER) があります。重粒子線 (炭素) とガンマ線の治療効果を比較すると、 <図1> に示す通り、数値が大きいほど効果が高いRBEで約3倍、数値が小さいほど効果が高いOERで約1/2倍という、医学的に優れた特性を備えています。

図1. 各種放射線の生物学的効果比(RBE)と酸素増感比(OER)

一方、正常組織に対する障害の少ない放射線を用いることも大切です。そのためには照射された放射線の強さ (線量) が、体内でどのように変化するかを知ることが必要です。

図2. 各種放射線の生体内における深部線量分布

<図2> の深部線量分布に見られる通り、エックス線や速中性子線は身体表面近くでもっとも強く、深く進むにつれて減衰します。このことは、これらの放射線で深部のがんを治療する場合、患部に至るまでに正常組織が障害を受けやすく、また照射標的を通り過ぎた深部にまでも影響を与えてしまうことを示しています。これに比べて陽子線や重粒子線(炭素)の場合は、エネルギーに応じてある深さで急に強くなるものの、その前後は弱く抑えられているため、ピークの部分をがんの患部に合わせることにより、正常組織への障害を少なくすることができます。放医研では、治療効果が大きく、正常組織への影響が少ない理想的な放射線、重粒子線 (炭素) によるがん治療に取り組んでいます。

粒子の大きさ.エックス線やガンマ線は、電磁波の一種です。陽子線、速中性子線、重粒子線(炭素、ネオン、アルゴン等)は、粒子線とよばれています。

■ 世界最先端の重粒子線がん治療装置HIMACによるがん治療

現在世界各地で粒子線による治療が進められていますが、そのほとんどが最も軽い原子である水素のイオン (陽子) を用いています。ところが放医研での10年以上の臨床試験を通じて、炭素線は陽子線とは異なる優れた性質を持つことが明らかになってきました。

放医研では1994 (平成6) 年から世界初の医療専用の重粒子線加速装置HIMACから得られる炭素イオンを使ってがん治療の臨床試験を行っています。この成果をもとに2003 (平成15) 年10月には厚生労働省から先進医療として認められ、臨床試験の段階から一般医療に向けて大きな一歩を踏み出すこととなりました。

現在、各地で重粒子線治療への期待が一段と高まりつつあります。放医研は、これまで蓄積した治療技術を全国に普及させるための技術支援や人材育成のほか、さらに進んだ重粒子線照射法を開発するなど多様な要望に応える努力を行っています。

■ 重粒子線がん治療を普及させるために

2005 (平成17) 年度に終了した重粒子線がん治療装置の小型化のための研究開発の結果、放医研ががん治療に利用しているのと同等のビーム性能を、HIMACの1/3程度の大きさで実現できる見通しが得られました。放医研はこの小型装置を用いた重粒子線がん治療を全国に普及させるために、2006 (平成18) 年度から重粒子線がん治療装置の建設を開始する群馬大学に技術的な支援を行う一方で、重粒子線治療医や診療放射線技師、医学物理士等の人材育成の中心的な役割も担っています。

また、レーザー加速等新たな技術を用いて、既設の病院施設内に設置できるほど小型の治療装置の開発研究を、外部の研究機関や大学等と共同で行っています。

画像 : 重粒子線がん治療を支えるHIMAC

HIMAC共同利用研究. HIMACを利用した基礎研究. HIMACのような高エネルギーの重粒子線を供給できる加速器はその数が非常に限られています。日本ではもちろん、世界を見渡してもアメリカやドイツ、ロシアにあるだけで、医療以外の分野の研究者も貴重な研究資源であるHIMACに注目しています。

HIMACを用いたがん治療の臨床試験は、平日の午前7時から午後7時までの間行われていますが、これ以外の時間帯である夜間や週末に、HIMACからの高エネルギー重粒子線を用いた照射実験を中心として、広い分野の基礎科学研究が行われています。これらの研究を総称して「HIMAC共同利用研究」と呼んでいますが、研究テーマの募集は年に2回、放医研に限定せず広く所外の研究者からの提案を受け付けています。応募された研究課題は放医研外の研究者を中心とした「重粒子線がん治療装置等共同利用運営委員会」の「課題採択・評価部会」で審議を行います。こうしたシステムにより透明性・公平性を確保し、貴重な研究施設を有効に活用しています。

共同利用研究は1995 (平成7) 年10月から開始され、毎年度100課題を越す研究が行われています。参加する国内外の研究者の数は毎年500人を超える規模になっており、60篇を超える論文が発表されています。近年は大勢の大学院学生も研究に参加するなど、我が国の研究者育成の一端を担っています。

詳細ページ > 共同利用研究 : HIMAC

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