放射線の性質

 このシリーズの最初に述べましたが、第一に、放射線は人には見えな

い、聞こえない、感触もない、臭いもないし、味もない。つまり、人間

の五官で感ずることはできません。しかし、放射線には直接あるいは間

接に物質を電離する性質があります。これをうまく利用して、間接的に

放射線の存在すること、あるいは、その量を知ることができます。

 第二に、放射線には物を通り抜ける性質がありますが、放射線の種類

によってその透過力は異なります。例えば、放射性物質から出てくるα

線は、空気中なら数cmで止まってしまいますし、1枚の紙で止めること

ができます。β線なら0.5mm位のアルミの板で止めることができます。

ところが、γ線はコンクリートの壁や、鉛などの遮蔽材で、その量を減

らすことはできますが、完全に止めることはできません。コバルト− 60

のγ線は30cmのコンクリートでも、約1/10は通り抜けてしまいます。

 一般に、α線やβ線だけでなく、加速した電子線、陽子線、重イオン

線など電荷を持った放射線は、直接電離放射線と呼ばれ、その透過力あ

るいは透過厚さは、粒子の種類やエネルギーによって決まってきます。

一方、X線やγ線、中性子線など電荷を持たない放射線は間接電離放射

線と呼ばれ、透過物質の厚さと共に減少しますが、完全になくなること

はありません。もっとも十分厚い壁で遮蔽され、普通の自然放射線の量

と同じくらいになれば、透過量を知ることは難しくなります。

 加速器などで人工的に作り出す放射線には、もっと高いエネルギーの

荷電粒子もあって、エネルギーは低下しますが厚い物体を通り抜けてし

まうこともあります。また、その荷電粒子が原子核反応により2次的に

放出する放射線には電荷を持たないものもあるので、厚い壁でも僅かな

X線やγ線、中性子線などが通り抜けてくることもあります。X線や中

性子線でも、エネルギーが高くなれば透過力も増します。

放射能の半減期

 放射性物質から放出される放射線の量、すなわち放射能は、時間と共

に次第に減っていきます。その減り方を表すのに「半減期」という言葉

を使います。最初1000あった放射線の量が500に減るまでの時間を半減

期といいます。半減期は、放射性物質の種類によって異なります。一般

的に、半減期が長ければ長いほど単位質量・単位時間当たりの放射線の

量は少なくなりますが、放射能の量はなかなか減りません。一方、短半

減期の放射性物質は、初めは単位質量・単位時間当たりの放射線の量は

多いのですが、比較的短時間の内に放射能の量は減って無くなってしま

います。

 主な放射性物質の半減期として、最近核医学検査でよく使われる炭素

−11、窒素−13、酸素−15、フッ素−18は、それぞれ20分、10分、

2分、110分です。核分裂で比較的たくさんできるストロンチウム− 90

やセシウム−137の半減期は、それぞれ29年、30年です。いろいろな分

野で広く利用されているコバルト− 60は約5.3年です。医療によく使わ

れていたラジウムは1600年、原子炉の燃料として使われているウラン

−235は71億年です。天然に存在し、私たちの体にもたくさん含まれて

いるカリウム−40の半減期は約13億年です。私たちは元々、全く放射線

や放射能のないところでの生活はできないのです。

                    (特別研究官 河内 清光)