HIMACが動き始めて、早くも4年が過ぎてしまいました。重粒子線治療の臨床試行 を円滑に推進するために、HIMACの稼働を前にして、医療部門と関連する研究部門を 重粒子治療センターの中に一つにまとめられ、医用重粒子物理・工学研究部は、セン ターにおいて装置の開発研究、並びに高度化研究を主とした研究部として発足しまし た。とにかく、世界で初めての医療専用の重イオン加速器で臨床試行を成功させるた めには、緊密な連携プレーが不可欠でした。現在、三研究室で構成され、スタッフは 総勢12名ですが、併任の研究員や、客員研究官、科学特別研究員、粒子線推進研究 員、研究生等を含めると約25名になります。第一研究室は、HIMACの装置関連ではイオン源からRFQやアルバレ型線形加速器の 開発、高度化を担当しています。一方、低エネルギー部門の加速器という観点からサ イクロトロンの高度化、維持にも協力しています。最近では、医療と同時に、宇宙関 連の研究もスコープに入れて18GHzのECRイオン源を導入しました。また、前段加速 器においては、3つのイオンを同時に供給するための時分割加速法を実現しました。 異なる照射室には、同時に異なるイオンを供給できるようになれば、装置の利用効率 は格段に向上します。現在の炭素イオンだけによる治療から、将来的には腫瘍の種類 や深さ位置により、最適イオン種の選択が可能になることでしょう。 第二研究室では、シンクロトロンの取り出しビームの安定化と高速応答性の実現に 力を入れると同時に、余剰ビームの減速技術の確立などを実現しました。これは、肺 がんや、肝臓がんなどの呼吸同期照射の実現に大きく貢献しました。一方、ポジトロ ン放出核種の医療への応用のために、物理汎用実験のビームラインを延長して、2次 ビーム生成ラインを整備しました。将来、治療計画の確認や、治療照射の照合のため に利用されることが期待されています。 第三研究室では、HIMACの照射システムや制御の高度化研究を進めています。この 研究室は、実際の治療に直接関連する部分が多く、常にその対応に追われています。 現実に患者と接する部分の装置開発が主であり、装置全体あるいは、重粒子線治療そ のものの評価もここで決まってしまう可能性もあります。平成8年からは呼吸同期照 射を実用化しましたし、現在は、ビーム入射面の線量をより軽減するための3次元標 的成形照射の実用化の研究が進められています。 臨床試行を開始してからこの3年間に、治療システム開発室や、ビーム測定開発室 がセンターの中にできましたが、主としてこの研究部から独立したものです。臨床試 行、あるいは医療を実施するに当たり、業務的な部分をより円滑に進めるため研究部 から独立させたものですが、実質的には、一人二役、三役でこなしている面もあり、 相互の連絡は不可欠で一緒に行う打ち合わせも多くなっています。 重粒子線治療はその緒についたばかりで、装置や照射技術の高度化開発研究の成果 が、すぐ患者治療に生かされ結果の見えることが、われわれの生き甲斐にもなってい ますが、同時に、これからの進歩も期待されているだけに、安閑とはして居られない という任の重さも認識させられています。 ![]()