牛乳などに含まれるラクトフェリンに放射線防護効果を確認
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放医研 基盤技術センターの西村 義一 センター長らは、石巻専修大学 (小林 陵二学長) 理工学部生物生産工学科 角田 出教授と韓国水力原子力(株)保健研究院(金鐘淳院長) の金煕善室長らとの共同で、母乳や哺乳類の乳汁に多く含まれるラクトフェリンに放射線障害を防護する顕著な効果があることを、マウスを用いた実験で明らかにした。これまで放射線防護剤の多くは、被ばく前の投与で予防的な効果を示したが、ラクトフェリンは、放射線被ばく後に投与しても有効な効果を示す治療用の薬剤としても注目され、また同剤は、通常の食品として流通しており、安価であるばかりか経口剤や注射剤、坐剤などさまざまな形の薬品として使用できる利点を備えている。 放射線防護については多くの薬剤が報告されている。副作用を伴うものもあり、新たな薬剤開発、特に放射線被ばく後に投与して有効な効果が得られる薬剤が待たれていた。今回確認されたラクトフェリンの効果は、新たな放射線障害治療薬剤の開発に繋がるものと期待され、「抗放射線被ばく障害剤」として特許出願を完了している。今後、同研究グループは、ラクトフェリンの投与方法、他の薬剤との併用効果、ならびに放射線防護機構の解明などに向けた研究を進める。 今回の成果は、昨年11月26日、東京国際フォーラムで開催した「第2回ラクトフェリンフォーラム」で紹介され多くの関心を集めた。 ラクトフェリンの放射線防護効果の確認実験ラクトフェリンは、母乳や牛乳に含まれるものが有名である。ウマ、マウス、ラット、ヤギ等多くの哺乳動物の乳汁及び涙などの分泌物にも含まれている。また、これら天然に得られるラクトフェリンの他、遺伝子工学を用いた手法により得られたラクトフェリンも化学的組成が変わらないことから同様に使用可能で、抗放射線被ばく障害作用を検証するために、次のような実験を行った。 ● 経口投与による実験 ![]() 図-1 ラクトフェリン添加飼料で飼育したマウスに6.8GyのX線を全身照射した後の生存曲線 ● 腹腔内投与による実験 ![]() 図-2 6.8GyのX線を全身照射した後、ラクトフェリンを腹腔内投与した後の生存曲線 ラクトフェリンの放射線防護効果に関する考察ラクトフェリンがこのように高い放射線防護作用を示すメカニズムは、まだ解明されていないが、ラクトフェリンはヒドロキシラジカル*4)のラジカルスカベンジャー*5)であり、腸内細菌への作用等も関与していると考えられる。また、照射後のラクトフェリン腹腔内投与で生存率の上昇が観察されたことは、免疫系が大きく関与していることを示唆している。 ● ラクトフェリンのラジカルスカベンジャー能 一般的に放射線抵抗性は抗酸化作用による活性酸素抑制及び免疫機能の活性化により生ずるものと考えられている。生体の約70%は水分で、水に放射線があたるとフリーラジカルが発生します。放射線の生体に対する作用の多くは生体中の水の放射線分解によって生成する活性酸素やフリーラジカルによるものです。水の放射線照射により、スーパーオキシドアニオンラジカル(O2-)とヒドロキシラジカル(・OH)という二つのフリーラジカルが生成する。生体には活性酸素やフリーラジカルを消去し、生体膜の過酸化を防ぐ強力な化学的な防御機構が存在しているが、このフリーラジカルを消去させることが生命の維持に不可欠となっている。これらの障害から生体を防御するには、
といったことが考えられる。ラクトフェリンにはスーパーオキシドに対する消去能は認められなかったが、ヒドロキシラジカルに対するラジカルスカベンジャー能を有することが明らかになった。ラクトフェリンは鉄を含んでおり、ラクトフェリン含有飼料を与えたマウス群での放射線抵抗性のメカニズムとしては上記(2)の可能性が高いものと考えられる。 ● ラクトフェリンの腸内細菌増殖の抑制効果
図-3 マウス5Gyを全身照射した後の腸内細菌数の変化 今後の展開今後、研究グループは、ラクトフェリンを抗放射線被ばく薬剤として活用するために、ラクトフェリンの放射線防護機構の解明に注力していきます。また、投与方法、他の薬剤との併用効果を探索し、放射線治療や診断の現場において効果的に活用する予防薬、治療薬としての可能性を含めた研究に取り組んでいきます。 【用語解説】*1) AIN-93飼料 *2) C3H/Heマウス ![]() *3) 6.8Gy *4) ヒドロキシラジカル (・OH) *5) ラジカルスカベンジャー |