研究レビュー

次世代PET用3次元放射線検出器を開発
−究極の画像診断を可能にする夢のPET装置−



放射線医学総合研究所はこのほど、国際的な競争下にある次世代PET(ポジトロン断層画像診断装置)の開発において、世界に先駆け、システムのキーとなる新規検出器の開発に成功した。今回の4段深さ位置情報を同定できる3次元放射線位置検出器の開発は、PET本来の潜在能力を充分に活かすことができなかった従来のハードやソフトの問題を解決する独創的な研究成果であり、高感度と高解像度を両立させる次世代PETの国際的な開発競争において一気に先行することとなる。

医学物理部・診断システム開発室長 村山秀雄


■研究開発の背景

PETは、がん診断をはじめとする生体の代謝機能の診断装置として世界的に研究開発が進められているが、感度と分解能を両立させるという本質的な研究開発については停滞している状況にある。こうした中で我が国のPET研究開発が欧米に先行されている現状を打開するため、放医研の研究施設、研究環境を利用して千葉大学、東京工業大学、東京大学、北里大学、立教大学、筑波大学、神戸高専および日立化成工業(株)、浜松ホトニクス(株)、(株)島津製作所等の研究者・技術者が参加した次世代PET研究班が共同研究を進めてきた。

■開発技術の概要

本検出器は、2.9mm×2.9mm×7.5mmのケイ酸ガドリニウム結晶を2行2列に並べて1段が構成されており、これを基本に4段に重ねたものを1つの結晶ブロックとしている。結晶ブロックのそれぞれの結晶間に65ミクロンの光学反射体を適宜挿入することで、それぞれの結晶で吸収される放射線の位置弁別およびエネルギー弁別を精度良く行える。さらに、それぞれの結晶のセリウム添加率や表面状態を制御することにより、従来は不揃いであった放射線検出ごとの信号強度が、すべての結晶で同一に揃えることに成功したため、後段の信号処理が容易となった。新規開発の大型位置感応受光素子を採用し、光学反射体の加工、配列法を工夫して10万個以上の結晶を使用するPET用検出器を実用化しつつある。なお、本研究開発では現在7件の特許を申請中だが、今後さらに多くの申請がなされる見込みである。

■研究開発の効果

今回の検出器の開発によって従来のPETでは両立できなかった感度と解像度が飛躍的に向上する。例えば、本検出器を頭部用PET装置に実用化すれば、解像度を従来の5mmから3mmに向上でき、かつ感度を従来の3倍改善することが可能となる。したがって、検査時間を従来の3分の1に短縮できる見込みであり、脳機能検査において、感度不足のために平滑処理していた問題を克服できるため、機能画像の解像度を10mmから5mm以下に改善できる見通しである。脳の活動をリアルタイムに近い形で測定できるものと期待されている。

■今後の研究開発の課題

DOI検出器が実用化できたとしても、その潜在能力を活かすには、その他の要素技術を見直して、新たな技術革新を進める必要のあることが認識されている。さらに、1つの検出器ユニット内で多くの情報が発生するため、それ自体で知的に情報を処理する工夫が不可欠であり、検出器ユニット間の情報伝達及び処理をきめ細かく行うことにより、従来の検出器では不可能だった高精度な位置情報の取得を可能にすることが期待されている。多数の出力信号をリアルタイム処理するための専用の特定用途向け集積回路(ASIC)を開発すると同時に、より高精度な画像形成のために、複数の検出素子にまたがるガンマ線の多重相互作用をリアルタイムに分析するなど、放射線検出情報を有効に活かす新たな工夫も望まれる。また、その波及効果により新たな研究開発分野を創出する可能性がある。

一方、より高性能で安価な検出器ユニットを開発し、装置の普及を図るには、新規シンチレータや新規受光素子を研究開発することが今後も必要である。ポストゲノム時代の新しい診断法として潜在力のあるPETを、将来益々重要となる予防医学や再生医療に役立てるには、異分野の研究者・技術者の有機的な連携の下で、臨床応用の目的にかなった放射線検出器素子の基礎研究を地道に続けていくことが望まれる。

■国際会議における発表

本件は、2002年11月15日、米国ノーフォークにおいて開催された専門家国際会議:2002 IEEE Nuclear Science Symposium & Medical Imaging Conferenceにおいて発表され、高い注目を集めた。

次世代PET用3次元放射線検出器を開発
次世代PET用3次元放射線検出器を開発
次世代PET用3次元放射線検出器を開発
次世代PET用3次元放射線検出器を開発
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