がん治療最前線

シリーズ5 子宮頸部がん


子宮は西洋梨の形をし、下腹部の膀胱と直腸に挟まれるように位置しています。また、子宮は妊娠時に胎児がある子宮体部と膣に飛び出して見える子宮頸部とに分けられ、子宮がんはこのどちらの部位から発生したかによって子宮頸部がんと子宮体部がんに分類します。

子宮頸部がんは、がん全体の死亡率(そのがんで死亡する割合)や罹患率(そのがんにかかる割合)が増え続けるなかで、その死亡率・罹患率ともに明らかな低下傾向を示すがんのひとつです。この理由の一つに、子宮頸部がんは膣から飛び出して見える部分にがんが発生することが多いため、通常の婦人科診察で観察したり、検査すべき細胞や組織を採取することが可能で、したがって、早期発見・早期治療が可能となるためと考えられております。

自覚症状としては、がんの早い段階でははっきりしないことが多いので、がん年齢に達した方には集団検診を受けることをお勧めします。がんが少し進行すると月経でない時(性行為の時など)の出血があったり、月経の時の出血が長引いたり増えたりすることがあります。また、おりものの量が増えたり、それまでとは異なるおりものがあったりもします。

しかし、集団検診が行われるようになって早期発見することが出来るようになってはおりますが、高齢の方では性行為の時の出血ということは少なく、かつ検診の受診率も低いため、かなり進行した子宮頸部がんとして見つかる高齢の方が今でもいらっしゃいます。また、わが国においても子宮頸部がんと診断を受ける年齢が若年化する傾向になっており、検診時や症状が見られたときには進行子宮頸部がんとなっている若い方も少なくはありません。

子宮頸部がんの治療法として、現在は手術療法と放射線療法の2つが主な柱となっております。子宮頸部に限局したがん(I期)や子宮頸部の周囲の組織にわずかに進展したがん(II期)であれば、手術療法と放射線療法のどちらの治療法を選択してもほぼ同程度の、5年生存率(治療後5年以上生存した割合)で70%以上と良好な成績が多くの施設から報告されています。しかし、この程度のがんであっても、第二次世界大戦での原爆の影響で放射線治療の副作用が過大に評価されていたことなどにより、日本の多くの施設では放射線治療が選択されることは乏しく、ほとんど手術療法が選択されているのが現状です。

一方、子宮頸部から大きく広がり骨盤内の筋肉・膣の入り口近くまで進展したがん(III期)や子宮の近くに存在する直腸や膀胱まで進展したがん(IV A期)の場合は、手術療法は困難であり、放射線治療が選択されます。この様にかなり進行した場合であっても、放射線治療で15%から60%程度の5年生存率が報告されています。また、最近ではこの様に進行したがんの場合には抗がん剤による化学療法が行われ、放射線療法や手術療法の単独治療より良好な結果であるという報告もみられておりますが、長期の効果や副作用などまだはっきりしない点も多く、もう少し経過を見る必要があると思います。しかし、かなり進行してしまったがんの場合には、15%程度の成績が報告されていることからも分かるように、放射線治療単独では治癒困難となってしまうこともあるので、効果の高い抗がん剤の開発を含めた新たな治療法の開発が望まれております。現在、放医研では放射線治癒単独では治癒困難と考えられる著しく大きな子宮頸部がんに対して、 炭素イオン線治療の第I/II相試験を行っており、新しい治療法の一つとして有用かどうか治療後の経過を見ております。

(重粒子医科学センター病院 前林 勝也)



戻る