II-2)食品中の放射性物質からの被ばく低減化に関する研究
西村義一、湯川雅枝、渡辺嘉人、白石久二雄(人間環境)渡部輝久、宮崎多恵子(那珂湊放射生能研究センター) 村松康行、内田滋夫(4G)
これまで、動植物中に取り込まれた放射性核種のラット体内での動態を調べる研究、チェルノブイリ事故直後に採取した葉菜類の洗浄などによる除染効果を調べる研究、食品中の安定元素分布の測定法の確立、食品別の放射性核種の摂取寄与率の推定などを行ってきた。今回の特別研究ではこれまでに得られた知見を整理するとともに、化学形が胃腸管吸収に及ぼす影響、調理加工による農作物中の核種濃度変化、輸入食品による決定食品の検索などを行い、より精度の高い線量評価および被ばく低減化に資するための調査研究を行うことを目的としている。
すでに食品や植物に取り込まれた塩化セシウムは植物中で変化を受けていないことなどを明らかにした。被ばくが長期にわたる場合、排泄促進剤も連続的に摂取する必要があり、生体に大きな負荷を与えないことが望ましい。キトサンは動物性の食物繊維で毒性が無いため、これに合致する有望な排泄促進剤として期待される。キトサンは外部放射線に対しても強いものと考えられており、キトサンを添加した飼料で飼育したマウスに7GyのX線を照射したところ、通常の飼料で飼育した群との間に有意に放射線抵抗性を示した。照射後の血液像を観察すると、キトサン摂取群で白血球、血小板の回復が早く、何らかの生体防御機構が働いていることが推測された。このメカニズムを明らかにするため、キトサン摂取による腸内細菌叢の変化、多臓器アルカリ単細胞ゲル電気泳動法を用い、マウス臓器のDNA損傷回復を観察した。
また、日本人の被ばく線量低減化の観点から、食物摂取による内部被ばくの実態(決定食品・決定経路)を知ることを目的にした研究をおこなっている。前年度は国内の飲料水に対して輸入ミネラル・ウオーターを飲用した場合の∩232♀Th,∩238♀Uの摂取量の増加と線量について検討した。これまでに日本人の摂取する食品を18群に分類し、食品群別の放射性核種の摂取寄与率についても研究を行っている。日本食の場合は核種にもよるが、総じて海藻類、魚介類などの水産食品の寄与が高い。セシウムに関しては、キノコ類等の寄与率が高く、種実類、肉類、芋類の濃度が高いことが解ったが、食品群別研究では、個別の食品における濃度差については情報が得られない。具体的な決定食品を知るために本年度は寄与率の高い食品群、キノコ類、種実類、海藻類等について、個別的に食品の収集を行い、化学分析を始めている。
【研究発表】
(1)Nishimura, Y., Kim, H. S.:Research Seminar on Nuclear Medicine in Nuclear Future, Kwang-ju、2000.2.
(2)Kim, H. S., Nishimura, Y., Watanabe, Y.,Yukawa, M., Wada, M., Kang M. I. : Chitin and Chitosan Research,6:51-58, 2000
(3)Kim, H. S., Nishimura, Y., Watanabe, Y., Yukawa, M., Wada, M., Kim, H. K., Woon, J. O.: Chitin and Chitosan Research, 6:226-233,2000
(4)Y. Nishimura, H.S. Kim, Watanabe, M. Yukawa, K. Imai, K. Watari, J. Inaba and N. Matsusaka.: Sorption Methods and Technologies in Settlement of Ecological and Endoecological Problems of the Chernobyl Accident, Kyiv. 2000.7.
(5)西村義一、金 煕善、河野明広、金 桂{Y、和田政裕、渡辺嘉人、湯川雅枝:第14回キチン・キトサンシンポジウム、2000.5,吹田市
(6)Shiraishi,K., Tagami, K., Muramatsu, Y. and Yamamoto, M., C.: Health Physics,78, 28-36, 2000.
(7)白石久二雄、ぶんせき、9,522-527,2000.