2.9 放射能調査研究

  1. 環境中の空間ガンマ線線量調査
  2. 居住環境中のラドン濃度の調査
  3. 大気浮遊塵中の放射性核種濃度
  4. 人体臓器中の239・240Pu濃度
  5. 環境中のトリチウムの測定調査
  6. 環境中の14Cの濃度調査
  7. 原子力施設周辺住民の放射性及び安定元素摂取量に関する調査研究
  8. 人体の放射性核種濃度および線量の解析調査
  9. 沿岸海域試料の解析調査(1)
  10. 沿岸海域試料の解析調査(2)
  11. 日本周辺海域の放射能の解析調査


上位の目次

1.環境中の空間ガンマ線線量調査

 藤高和信、古川雅英、松本雅紀、床次眞司(環境衛生研究部)、岡野眞治(特別研究員)

生活環境の変化にともなう環境放射線レベルの変動を追跡している。変動の要因には、都市化や社会・生活習慣等の変化による人為的なものと、火山噴火など自然条件の変化によるものとがある。本年度は、特に自然的変動に着目し、平成4年度より継続中の火山地帯における空間ガンマ線線量率データの蓄積と、宇宙線線量率の高度変化を捉えることを目的として、富士山における調査を実施した。

測定には、1"φ×2"NaI(Tl)、3"φ×3"NaI(Tl)、3"φ球形NaI(Tl)の検出器から成る3種類のスペクトルサーベイメータを使用し、核種寄与スペクトルならびに宇宙線電離成分データを同時に入手した。さらに、中性子レムカウンタにより宇宙線中性子成分線量率を測定した。また、核種分析用の土壌・地質試料を採取した。

富士山における空間ガンマ線線量率は、標高約1500 mから山頂部(3740 m)の区間における7地点で得られた1"φ×2"NaI(Tl)スペクトルサーベイメータの指示値に基づけば、平均32.3±3.9nSv/hであった。宇宙線線量率は標高が高くなるにしたがって増加し、 3"φ球形NaI(Tl)スペクトルサーベイメータによって得られたデータの解析結果からは、山頂部における宇宙線電離成分線量率は約104nSv/hであり、ほぼ同じ地磁気緯度に位置する海面レベルの測定点(富士市内、放医研)において同時期に得た値の約3.6倍となった。中性子成分線量率は、山頂部において約33 nSv/hであり、海面レベルの約10倍となった。

今回得られた宇宙線データを用いて、これまでに全国調査によって蓄積してきた空間放射線データに含まれる地殻ガンマ線寄与と宇宙線電離成分寄与の分離評価を進めている。また、土壌試料の核種分析を行うとともに、火山による空間ガンマ線線量率の違い等について、最新の地球科学的知識に基づいた解析作業が進行中である。さらに高精度の評価・解析を行うため、異なる地磁気緯度における宇宙線測定や、他の火山との比較測定等を計画している。

[研究発表]

    藤高:放医研環境セミナー, 千葉, 1994.12.
    古川、松本、床次、藤高、岡野:RADIOISOTOPES, 44, 19-22, 1995.
    松本、古川、床次、藤高、中村:RADIOISOTOPES, 44, 33-34, 1995.
    松本、古川、床次、藤高:日本放射線影響学会第37回 大会, 福岡, 1994.10.




上位の目次
本ページの目次
次の項目
上位目次の次の項目

2.居住環境中のラドン濃度の調査

 藤高和信、古川雅英、松本雅紀、床次眞司(環境衛生研究部)、土居雅広(総括安全解析研究官付)

現在、放医研が開発したプラスチック製ラドントロン弁別モニタを用いた全国ラドン濃度水準調査が進行中である。この調査に関わる放医研が担うべき役割は、測定結果の質的保証(技術的支援を含む)を行うことである。このモニタによる測定値の信頼性を確保するため、名古屋大学、早稲田大学、動力炉核燃料開発事業団人形峠事業所のラドンチェンバーにおける校正実験を複数回行うとともに、日本分析センターと放医研との間で、密閉された比較的高濃度の部屋及び換気が十分になされている低濃度の部屋の2箇所で相互比較実験を繰り返してきた。

一般家屋の調査に引き続き、1日の約1/3を過ごすとされる職場環境(施設等)の調査を実施する予定になっているが、就業時間帯とそれ以外の時間帯でのラドン濃度に関する十分な基礎データが蓄積されていないため、放医研ならびに実際のオフィスにおいて予備調査を行った。この調査で使用したモニタは実績のある静電型ラドンモニタで、就業時間帯(月曜〜金曜の 9:00〜17:00)のみを測定対象とするようにタイマーを取り付けたタイプと従来のタイプの各1台ずつを測定箇所に設置した。このタイマーにより印加電圧のON/OFFが行われ、モニタ内で生成した正電荷を有する娘核種を電極に集める仕組みになっている。両者のモニタを用いることにより、終日の平均ラドン濃度と就業時間帯の平均ラドン濃度をそれぞれ求めることが可能となった。また、検出器としてこれまで用いられていた硝酸セルロースフィルムの感度の安定性が失われてきたため、新たにバリオトラック(CR-39: アリルジグリコールカーボネート)に変更し、測定精度の向上と安定性を確保した。

さらに放医研内においては、アクティブ型ラドンモニタを用いてラドン濃度の時間的変動を調べた。結果の一例を図に示す。夜間から明け方にかけて徐々に高まったラドン濃度は就業時間の始まりとともに部屋に設置されている空調機ならびに人の行動(換気)などによって急激に減少している。この結果は、実環境においても同様の傾向があることを示唆しており、今後さらにデータを蓄積し挙動を解明していく必要があると考えられる。

[研究発表]

    床次、飯本、黒澤:日本原子力学会,札幌,1994.9.
    黒澤、飯本、床次:日本原子力学会,札幌,1994.9.
    Tokonami, S., Fujitaka, K. and Kurosawa, R.: IAEA RCM, Vienna, 1994.12.



上位の目次
本ページの目次
次の項目
上位目次の次の項目

3.大気浮遊塵中の放射性核種濃度

 本郷昭三、湯川雅枝(環境衛生研究部)、田中千枝子、佐藤愛子(技術補助員)

1.緒言

 大気浮遊塵中の放射性核種の濃度を調査するために、千葉市穴川にある放射線医学総合研究所構内の地上1〜1.5mの外気浮遊塵を採取し、放射性核種の分析測定を昭和40年10月より継続実施してきた。昭和56年3月まで静電式集塵器を用いて試料採取を行ったが、同年4月からは本研究所で開発試作した集塵器による採取を行っている。

2.調査研究の概要

(1)試料採取

 浮遊塵は大口径のエアーサンプラーを用いて集塵効率が0.995以上の大型グラスファイバー濾紙(20.3×24.5cm)に連続して集めた。 サンプラーの流量は、マイクロコンピュータによって一定量を保つように制御されている。濾紙の目詰まりのため流量が下がっても、積算流量は正しく表示されるように設計した。

(2)分析測定

 浮遊塵を捕集したグラスファイバ−濾紙は、所定の大きさに折りたたんで、Ge(Li)検出器によるガンマスペクトロメトリを行った。ガンマ線放出核種定量後、水酸化ナトリウムと塩酸によりストロンチウムを抽出し、発煙硝酸法で精製した。

 90Srはマイクロコンピュ−タによる自動解析装置付きの低バックグラウンドベ−タ線スペクトロメ−タにより定量を行った。

3.結果

 本年度は1993年 4月15日から1994年 2月18日までの採取試料についての結果を報告する。表−1にガンマ線放出核種(137Csのみ検出)の定量値を示した。また、表−2にSr−90の未発表の分析結果について示した。

4.結語

 結果に示すように、大気浮遊塵中の放射性核種のレベルは近年非常に低下し、検出できないことが多い。大気浮遊塵中の放射性核種の濃度変動を経時的に観測する上で、放射能の自動モニタリングを行い、放射能レベルの変動を認めた時点での浮遊塵サンプルに関して詳細な分析測定を行うなど、異常時対応研究のために放射能レベルの非常に低い浮遊塵に関してのモニタリング方法の再検討を行う必要がある。大気浮遊塵中の放射性核種の詳細な経時的濃度変動に対応できる放射能の自動モニタリング装置の開発を行い、第1研究棟6階に設置し現在運転を開始しているが、集塵場所の移動に伴うデータの整合性チェックのため、当分の間従来の装置との平行運転を行う。

[研究発表]

    (1)本郷昭三、湯川雅枝、田中千枝子、佐藤愛子:第36回環境放射能調査研究成果論文抄録集、1−2、1994.
      表−1、表−2は1994年放調発表会の表と同じ。



上位の目次
本ページの目次
次の項目
上位目次の次の項目

4.人体臓器中の239・240Pu濃度

 湯川雅枝(環境衛生研究部)、阿部享、滝澤行雄(秋田大学)、田中千枝子、佐藤愛子(技術補助員)

1.緒言

 核爆発実験等によって生成したプルトニウム等超ウラン元素は広範囲に大気圏内に拡散し、徐々に降下して地球上に蓄積されている。また、原子力平和利用の進展に伴い、環境中の超ウラン元素濃度が増加するおそれがある。これらの元素は大気、食品などの種々の経路を通じて人体内に取り込まれているので、国民の被ばく線量評価の上でこれらの元素の環境、生体間の循環を知ることは重要である。このような見地から、環境試料及び人体臓器中のプルトニウム等超ウラン元素の濃度測定を実施している。

2.調査研究の概要

(1)試料の前処理

 人体臓器試料を湿式灰化する前に、灰化時の硝酸使用量の低減と作業時間の短縮を目的として試料の凍結乾燥を行っている。凍結乾燥の前後に試料の重量を測定し、臓器中の水分量を求めておく。

(2)プルトニウムの分離定量

 科学技術庁編の「プルトニウム分析法」に従って、灰化試料から陰イオン交換樹脂(Dowex 1×8)を用いてプルトニウムを分離し、ステンレス板上に電着した。239・240Pu の定量はアルファ線スペクトロメーターにより実施した。

3.結果

 今年度は昨年度に引き続き、四体分の主要臓器についてプルトニウムの定量を行った。結果を表−1に示す。臓器中のプルトニウム濃度は試料の保存時や解凍時に失われる組織水を考慮して乾燥重量当りとした。また、湿重量当りへの換算を可能にするため水分含有量も併記した。しかしながら、試料の採取時に湿重量のみしか記録されなかったものもあり、その場合は湿重量当りの濃度として示した。

4.結語

 人体臓器中のプルトニウム等超ウラン元素の濃度測定を継続する。また、環境から生体への移行を把握するために、必要に応じて大気浮遊塵、食品等の分析と、他元素との相関関係などについても検討していく。

[研究発表]

    (1)湯川雅枝、田中千枝子、佐藤愛子、阿部亨、滝沢行雄:第36回環境放射能調査研究成果論文抄録集、85−86、1994.
      表は1994年の放調発表会の時と同じ。




上位の目次
本ページの目次
次の項目
上位目次の次の項目

5.環境中のトリチウムの測定調査

 井上義和、宮本霧子(環境衛生研究部)、後藤文史郎、加瀬由美子(技術補助員)

原子力施設周辺環境における環境試料中の3H濃度を長期間継続的に測定し、分布と時間変化に関するデ−タを集積し解析することにより、3Hの環境動態を明かにし、モニタリング法や線量評価法の改善に役立てることを目的とする。主な対象地域は、千葉市、茨城県東海村および青森県六カ所村である。特に本世紀末の稼働が予定されている六カ所村の再処理施設の周辺環境については、3Hの環境への影響を評価するため、稼働前の自然レベルの分布と時間変動を把握しておくとともに、レベルの地域間差や時間変動の要因と考えられる地域の水文学的特性を明らかにする。

千葉市は日本のほぼ中央に位置し原子力施設が無いので、測定値は日本の3Hのバックグラウンドレベルを代表するので重要である。千葉市の月間降水の1994年の年平均値は、0.46±0.10Bq/Lであった。この値は10年前の1/2のレベルに相当するが、近年、年減少率が低下しているので、ほぼ自然生成レベルに達したと考えられる。1993年9月から1994年11月までの期間に千葉市で月毎に採取した水道水の3H濃度の平均値は、0.9±0.2Bq/Lであり、1994年10月に北の秋田市から南の博多市の範囲の日本全国8カ所で採取した水道水の3H濃度の平均値は、0.9±0.1Bq/Lであった。水道水の 3H濃度の地域差は小さく、千葉市の値は全国平均値と一致した。水道水の3H濃度は降水より2倍高く、なお核実験起源の3Hが水道水の供給源である河川水中に残存していることを示している。

茨城県内および東海村については、例年と同一地点で河川水、湖沼水、地下水および沿岸海水を採取した。那珂川と久慈川の1994年の3H濃度の平均値は 0.80Bq/Lであり、昨年より僅かに減少した。東海村の新川や阿漕浦の3H濃度は、最大50%程度高かった。東海村の地下水の3H濃度は、1.4〜4.4Bq/Lの範囲を示し、他地域の地下水の濃度 0.75 Bq/Lより高く、例年と同様に放出源距離依存性を示した。東海村の地下水のレベルは、1982年の施設からの一時的な放出の影響で、1984年に最大値約15Bq/Lを示した後、年々低下の傾向を示しており、現在はほぼ定常状態に達していると思われる。東海村沿岸海水の3H濃度は、他地域より数倍高かった。以上東海村の3H濃度は、安全上問題なかった。

青森県六カ所村については、1994年も2回河川水と湖沼水を採取した。5河川の3H濃度の平均値は1.0±0.2Bq/Lであり、茨城県より少し高く、降水の3H濃度が示す緯度効果の影響と考えられる。汽水湖を含む5湖沼の3H濃度の平均値は、0.8±0.2Bq/Lであった。河川と湖沼の3H濃度は、観測を開始した1991以来、約0.05〜0.1Bq/L年の減少率で低下している。

[研究発表]

    (1)井上、宮本、鈴木登美子:放射能調査研究報告書、(平成5年度)、NIRS-R-28,、放射線医学総合研究所、60-65、平成6年11月.
    (2)井上、宮本、鈴木登美子:第36回環境放射能調査研究成果論文抄録集(平成5年度)、科学技術庁、11-12、平成6年12月.



上位の目次
本ページの目次
次の項目
上位目次の次の項目

6.環境中の14Cの濃度調査

 井上義和、府馬正一(環境衛生研究部)、後藤文史郎(技術補助員)

環境中の14Cの主な起源は、自然生成、大気圏核実験および核燃料サイクル関連施設などである。14Cは半減期(5730年)が長いために、集団線量預託への寄与が、無視出来ないと考えられている。14Cが集団に及ぼす線量影響を起源毎に評価するためには、施設の影響のない自然環境および施設周辺環境における14Cレベルの長期間の時間推移と変動および地域分布などに関するデ−タが不可欠である。

自然生成および核実験起源の14Cの環境レベルを把握する目的で、1960年代初頭より現在に至るまで、主に日本産の植物精油と発酵アルコ−ルを測定試料として 14C濃度(比放射能、dpm/gC)を測定してきた。植物では、ある年に生育した部分の炭素中の14C濃度は、その年の大気中の二酸化炭素中の14C濃度を良く反映すると考えられので、測定値は、飲食物の摂取を通じて人体に摂取される14C濃度を推定し、線量評価を行う際の有用なデ−タとして使用出来ると考えられる。

今年度測定した試料は、1994年に日本で収穫されたブドウを原料として発酵醸造されたワインである。蒸留精製し、約91−95%のアルコ−ルを調製した。比重を測定して正確なアルコ−ル濃度を決定後、その10mlを同量のトルエンシンチレ−タと混合し、液体シンチレ−ションカウンタ− Packard社製 Tri-carb 2250CA/LLで1試料当たり500分測定した。バックグラウンド(B.G)計測試料は、同量の合成アルコ−ルを用いて調製した。この測定法では、1試料に導入できる炭素量は約4gであり、測定効率は約62%、B.G計数率は、約5.4cpmであった。測定結果を表に示した。日本の各地の14C濃度は、 15.0±0.1dpm/gC〜15.6±0.1dpm/gCの範囲であった。平均値は、15.3 ±0.2 dpm/gCであった。測定誤差を考慮すると、14C濃度の地域差は認められず、日本の14C濃度は工業地帯を除いてほぼ均一に分布していると考えられる。1980年から1989年までの10年間の14Cの濃度は、年減少率、約0.20dpm/gCで低下してきた。その後、1990年から1994年の最近5年間は、15.6dpm/gCから15.3dpm/gCと緩やかな減少傾向を示した。

1994年現在のレベルは、自然レベルの約12%増である。1980〜1994年の間の14C濃度のゆるやかな減少傾向は、炭素循環モデルに基づく対流圏の14C予測濃度(NCRP)と良い一致を示した。

今後は、核燃料再処理施設などの運転に伴い環境に放出される14Cが、局地的に環境濃度を上昇させる可能性があるので、施設周辺の環境試料を定期的に採取し、14C濃度を測定し、経年変化に関するデ−タを蓄積する必要がある。

[研究発表]

    (1)井上、鈴木:環境中の14C濃度調査、第36回環境放射能調査研究成果論文抄録集、3−4、科学技術庁、平成6年12月。
    (2)井上、鈴木:環境中の14C濃度調査、放射能調査研究報告書、7−9、放射線医学総合研究所、平成6年11月。

表   日本の1994年産ワインの14C濃度

 井上義和、府馬正一(環境衛生研究部)、後藤文史郎(技術補助員)

試料#ブドウの産地14C濃度 (dpm/gC)計測誤差、1SD (dpm/gC)
北海道15.30.12
秋田県15.60.13
山形県15.40.13
山形県15.00.12
山梨県15.40.12
山梨県15.30.12

1994年 平均値=15.3±0.20dpm/gC

上位の目次
本ページの目次
次の項目
上位目次の次の項目

7.原子力施設周辺住民の放射性及び 安定元素摂取量に関する調査研究

 村松康行、柳沢啓、吉田聡、坂内忠明 (環境放射生態学研究部)

 原子力施設から環境中に放射性物質が放出された場合、その経口摂取量を予測することが必要である。そのためには、地域住民の食品摂取量及び食品中に含まれる放射性核種及び安定元素濃度を把握しておくことが大切である。われわれは、以前より茨城県沿岸住民を中心に、食品消費量に関する実態調査を行ってきた。また、様々な食品中に含まれるCs-137、K-40、I-129などの放射性核種やSr、Zn、Mn、Co、Fe、Rb、Cs、Iなどの安定元素の分析を実施した。前年度は、種々の安定元素について、各食品群ごとの元素濃度の代表値を設定した。本年度は、食品を通じて摂取する安定元素の量を推定した。

 対象とした元素は、As、Ca、Cd、Cu、Fe、Hg、K、Mg、Mn、P、Pb、Se、Znであった。これらの分析法については前年度までの報告書に述べてあるが、主として放射化分析法とICP−発光分析法によった。CsやSrなどについては、いくつかの食品の分析値は得られたものの、濃度が低いため今回は対象元素とはしなかった。

 推定方法は、国民栄養調査(「国民栄養の現状」厚生省保健医療局1994年出版より)の各食品群の消費量に関するデータと本調査研究で前年度までに求めた各食品群についての分析値の平均値(又は代表値)を掛け合わせることで各元素ごとの摂取量を求めた。用いた食品群としては、穀類(米類、小麦及びその他)、いも類、豆類、野菜類、果実類、海藻類、魚介類、肉類、卵類、牛乳及び乳製品である。菓子類、油脂類等は消費量が少なく、また、データ数も少ないことから除いた。

 上述した13元素についての経口摂取量(1人1日当たりの摂取量、mg/d/p)の推定値を表−1に示す。データがまだ完全でないものがあるが、表に示した推定結果より以下のことが言える。

 イ) 約90%のAsは海産物(海そう及び魚介類)に起因する。

 ロ) 約70%のHgは魚介類に起因する。

 ハ) CdとMnの約40〜50%、また、Zn、Cu、Mgの約20〜40%が米に起因する。

 ニ) Seの多くは魚介類、肉類、卵類に起因する。

 ホ) Caの30%近くが牛乳及び乳製品に起因する。

 ヘ) Fe、K、P、Pbは特定の食品群ではなく、様々な食品群より寄与がある。

  本調査研究で求めた値を、白石ら(1988年)が日常食の分析から求めたCa、Fe、K、Mg、Mn、P、Znの値と比較したところ、比較的良く一致を示した(表−1)。

  これらの推定値は、あくまでも平均的な値であり、個人差は大きいと考えられる。しかし、それぞれの元素がどの食品群に起因するのかについての情報を得る上で有効である。また、クリティカルパスを考える上でも役立つと思われる。ただし、本推定値は、食品の調理加工についての効果は含まれていないので、その影響を考慮する必要がある。

[研究発表]

    (1) 村松、吉田、坂内、柳沢:第36回環境放射能調査研究成果論文抄録集、87-88、1994.
    (2) Muramatsu, Y. et al.: IAEA NAHRES-23, 157-172, 1994.



上位の目次
本ページの目次
次の項目
上位目次の次の項目