CT検査など医療被ばくの疑問に答える
医療被ばくリスクとその防護についての考え方Q&A

更新日:2013年9月27日

CT検査の被ばくは、どのぐらいなのでしょうか?

 一口にCT検査と言っても撮影場所や目的によってさまざまです。CT検査にはX線が使われます。その放射線の量(「線量」といいます)は、撮影部位(頭部・胸部・腹部・全身など)や撮影手法により異なりますが、1回あたり5-30mSv程度です(表1参照)。胸部X線撮影のように線量が少ない検査(0.06mSv程度)に比べると、X線CT検査の方が線量は多くなりますが、がんリスクという観点からみると、少量の放射線ということになります。では、これが人体にどういった影響を与えるのか、といった疑問に順次お答えします。

線量とリスクの関係で科学的知見から言えることは何でしょうか?

 大量の放射線に被ばくすればがんのリスク(危険度)が増えることは多くの研究で明らかになっています。しかし、CT検査で受けるような少量の放射線とがんの関係については様々な結果が報告されており、科学的に明らかにされていません。CT検査で受ける程度の放射線によってがんリスクが増えるかどうかを実証することは非常に困難ですが、仮に増えたとしてもその大きさは他の要因によるがんリスクと比べてかなり小さいと見積もられます。

※「リスク」について
 最近、リスクという言葉は様々な意味に使われるようになりました。中には「危険」と同義に用いて、「リスクがある=危険」といった言い方をすることもあるようです。しかしこれはリスク本来の意味からは、かなりかけ離れた使い方です。
 健康に関する「リスク」とは、「生命や健康にとって、望ましくない事象の発生確率、及びその結果の大きさの程度」であり、「今どれくらいのリスクがあるか」「ある行為や事象により、リスクがどれだけ増加するか」という捉え方で語られるべきものです。

CT検査程度の線量でがんになるのでしょうか?

 計算上は、1万人中数人ががんで死亡することになりますが、検査を受けなくても3人に1人はがんで亡くなっています(日本の場合)。
 繰り返しますが、CT検査で受けるような少量の放射線とがんのリスクの関係については、科学的に明らかにされていません。放射線防護の立場からは、人体を防護するための基準は、放射線に少しでも被ばくすればがんのリスクが直線的に増えるという仮定を用いています。基準になっているのは、原爆被爆者のデータです。ここから得られた線量と発がんとの関係を用いると、1万人が10mSv(およそCT検査1回分に相当)を受けた場合、その中で5人が、その放射線被ばくに起因するがんで死亡すると推計されます。一方、放射線被ばくを受けなかったとしても、1万人中約3,000人ががんで死亡します。こうしたがんについては、個人ごとで見るとほとんどの場合は何が原因でがんになったかはわかりません。しかし集団でみると、喫煙、食事、ウィルスや環境汚染物質など、一般の生活環境における要因が原因でがんになるケースが多いと考えられています。CT検査の放射線被ばくによってがんのリスクが増加すると仮定するとしても、その増加分は他の原因によるがんリスクと比べて非常に小さいと考えられます。

子供と大人で放射線の影響は違うのですか?

 一般的に言って、子供の方が放射線の影響を受けやすいことが知られています。
 子供は、大人に比べて放射線を受けてから長い期間を生きるのですから、検査のリスクについても、できるだけ低く抑えることが大切です。実際、放射線診断の現場では、子供を検査する場合、放射線の照射条件を調整し、線量を低減する取り組みが行われています。

診断を何度も繰り返しています。その度に、がんのリスクは高くなっているのでしょうか?

 理屈としては、高くなっている可能性があります。しかし、個人の健康を総合的に考えると、検査結果を元に医師が適切な医療行為をすることで、がんのリスクの増加分よりも、検査によって病気の状況がわかることのメリットの方が大きくなると考えられます。
 また、ある線量を何回かに分けて受けた場合には、同じだけの線量を一度に受けた場合よりもリスクが小さくなることが知られています。
 たとえ計算上がんのリスクが高くなるとしても、検査を受け、病気の発見や治療効果を確認することの方が患者さんにとってメリットがあります。なお、医師の判断以外による検査の繰り返し(例:患者さんの判断で病院を何度も変えて同じ検査を受けるなど)にはあまりメリットがありませんので、区別して考える必要があります。

放射線診断の便益(ベネフィット)は何でしょうか?

 がんなどの病気やけがを、迅速に、正確に、見つけます。
 検査全般に言えることですが、検査を受けることで体の不具合の様子(部位や程度)がわかり、適切な治療ができる、特に不具合が見つからなかったとしても「悪い病気かもしれない」という不安を解消することができ、安心できるというベネフィットがあります。加えて、放射線検査の場合は、PET/CT装置など最近の技術進歩により、かなり小さながんでも発見できるようになり、早期発見・早期治療により、完治する可能性も大きくなるという便益が考えられます。また痛みや苦痛を伴いませんし、子どもやお年寄り、病気の方にも適用できます。

放射線検査をすると言われたら、患者はどう対処すべきでしょうか?

 リスクだけにとらわれることなく、心配な場合はその検査の必要性を医師に確認した上で、必要な検査は受けるべきと考えます。
 検査を受けない場合には、病気やけがの発見が遅れる可能性という、別のリスクが生じます。がんや脳の外傷のように、特に重大な疾患・障害の可能性のある場合は、医師が必要と判断した検査を受けないリスクは高いと考えられます。

医療被ばくに関して、世界的な動きと日本の現状は?

 世界各地で積極的な取り組みが行われています。例えばWHOは医療放射線の防護に向けた活動を推進しています(Global Initiative)。IAEAの「放射線防護の安全基準(BSS)」の中でも、医療放射線に関する内容が大きく取り上げられています。EU諸国は連携して防護に取り組んでいます。米国で進められている「Image Gently」というキャンペーンでは、子供の体の大きさや厚みに合わせて条件を工夫し、なるべく低い線量で(ただし必要な画質を損なわない範囲で)撮影をするように働きかけが行われています。
 一方、日本は医療大国でありながら、医療被ばくの取り組みに関しては欧米と同等とは言えない状況です。例えば、放射線診断の被ばく線量の目安である診断参考レベルは、多くの国々で導入されているものの、日本ではまだ用いられていません。しかしながら、関連学会・職能団体は、放射線診療に関する各種ガイドラインを出している他、様々な防護に関する取り組みを行っています。また、医療被ばくの課題に関する情報を共有し、オールジャパンで取り組むことを目指して、2010年3月に「医療被ばく研究情報ネットワーク(略称:J-RIME、事務局:放医研)」が設立されました。
 放射線医学総合研究所は、医療被ばくにおける防護を患者の側のベネフィットとリスクの両方の視点から国際的に議論できる科学的知見を得るための研究活動を推進しています。2011年度からは、医療被ばくに特化した研究プログラムである医療被ばく研究プロジェクトを立ち上げ、エビデンスに基づいて上述の問題を解決に導くべく科学的知見が得られるよう、研究に取り組んでいます。さらに、医療従事者や患者の不安を低減するため、関連の規制やガイドライン策定にも貢献できるよう活動しています。

表1 各放射線診療の診断参考レベルと実際の被ばく線量


検査の種類 診断参考レベル 実際の被ばく線量
IAEAガイダンスレベル 日本放射線技師会
ガイドライン
線量の種類 線量 線量の種類
胸部撮影 0.4mGy 0.3mGy 入射表面線量 0.06mSv 実効線量
上部消化管検査   直接100mGy
間接50mGy
入射表面線量 3mSv程度 実効線量
乳房撮影 3mGy 2mGy 乳腺線量 2mGy程度 乳腺線量
透視 通常25mGy/分
(高レベル100mGy/分)
透視線量率
25mGy/分
入射表面線量率 手技により異なる  
歯科撮影 なし なし   2-10μSv程度 実効線量
CT撮影 頭部50mGy
腹部25mGy
頭部65mGy
腹部25mGy
CT線量指標 5-30mSv程度 実効線量
核医学検査 放射性医薬品ごとの値 放射性医薬品ごとの値 投与放射能 0.5-15mSv程度 実効線量
PET検査 放射性医薬品ごとの値 放射性医薬品ごとの値 投与放射能 2-20mSv程度 実効線量
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