放射線被ばくに関する基礎知識 サマリー版 第1号(Ver1.1)の公表について

平成23年7月1日(金) 14:00更新

放射線医学総合研究所は東京電力福島第一原子力発電所事故に対応し、3月14日より放射線被ばくに関する情報を「放射線被ばくに関する基礎知識」として公表してきました。原子力発電所事故による影響も経時的に変化してきており、公表してきた内容の一部に現段階ではあまり必要性がないものが見うけられるようになってきました。

そこで、これまで公表させて頂いた内容を精査し、最新の情報を追加した「放射線被ばくに関する基礎知識 サマリー版」を公表することと致しました。

今後も、その時点で必要な情報につきましては、これまでと同様「放射線被ばくの基礎知識 第○報」として公表させて頂きます。

【放射線被ばくの影響】

1.原子力発電所の事故によって大気中に放出された放射性物質は、人にどのような影響がありますか。被ばくした量との関係、特に100ミリシーベルト(mSv)の意味について教えてください。

大気中に放出された放射性物質は、地表面や建物などに沈着して、環境中にとどまることがあります。この場合、地面からの直接のガンマ線からの被ばくと、大気中の放射性物質の吸入、放射性物質により汚染した飲料水や農作物を摂取することにより、体内に取り込まれた放射性物質による被ばくが考えられます。放射線に被ばくすると健康に影響を及ぼすことがありますが、その影響の有無と種類は受けた放射線の量(以下線量といいます)で違います。長期的な影響として、受けた線量が高いほど数年後から数十年後にがんになる危険性が高まると考えられています。

下の図をごらんください。がんは放射線だけでなく、食事、喫煙、ウィルス、大気汚染など様々な要因によって発症すると考えられます。起こった個々のがんが放射線によるものであると特定することはできません。従って、放射線でがんが起きているかどうかを検証するには、多くの集団において、受けた線量とともにがんが起こる確率も上昇することを調べる必要があります。原爆被爆者の調査ではおよそ100ミリシーベルト以上の線量(この線量は臓器ごとに放射線感受性の重みづけをして足し合わせた実効線量と呼ばれる線量で、外部被ばくと内部被ばくを受けた場合はそれらを合計した線量)では、線量とともにがん死亡が増加することが確認されていますが、およそ100ミリシーベルトまでの線量では、放射線とがんについての研究結果に一貫性はなく、放射線によりがん死亡が増えることを示す明確な証拠はありません。しかしながら国際放射線防護委員会(ICRP)は、放射線防護の目的のための慎重な考え方として、100ミリシーベルト未満でも線量に応じてがん死亡が高まると仮定することを勧告しています。ただし、この仮定は放射線防護の観点から用いるべき考え方であり、ごく低い線量を受けた集団で出るがんなどの症例数を計算するのに用いるのは適切でないと、述べています。

日本人は元々約30%ががんで亡くなっています。国際放射線防護委員会の推定によると、仮に1000名の方が100ミリシーベルトの線量を受けたとすると、生涯でがんで亡くなる方が300名から305名に増加する可能性があります。なお、ここで言う100ミリシーベルトとは年間の被ばく線量ではなく、これまで受けた積算線量です。また、この100ミリシーベルトには自然界から受ける放射線量(日本人で年間平均約1.5ミリシーベルト)は含まれません。

2.首都圏に住んでいますが、外出を避けたほうがいいですか? 放射線のレベルが高くなっていると聞きました。大丈夫でしょうか?

事故から現在まで首都圏で観測された放射線の量は微量で、今後事故が大きく拡大しない限りは、普段通りの生活をおくって全く問題ありません。放射線のレベルが通常の10倍あるいは100倍などと聞くと、たいへん高い線量のように感じられると思いますが、実際には健康に影響のないレベルです。

3月15日午前9時から午後5時に東京と栃木、群馬、埼玉、千葉、神奈川、山梨、静岡の1都7県で計測された放射線レベルでは最大で、1時間あたり1マイクロシーベルトと報告されています。これは、例えこの放射線レベルで1ヶ月間生活したとしても、合計の放射線量は0.7ミリシーベルト(胃のレントゲン撮影1回分強)で、健康に影響のないレベルです。

またピーク時の値がずっと続くようなことはありません。実際、東京都の発表では、4月6日時点では0.1マイクロシーベルト以下で、3月15日のピークに比べ10分の1以下になっています。

3.首都圏に住んでいますが、事故から数日後に雨に濡れました。健康に影響はないでしょうか?

雨の中にも事故によって放出された放射性物質が含まれていると考えられますが、その量はわずかです。これまで報告されている空気中の濃度から計算すると、雨に濡れて放射性物質が皮膚についたとしても、健康に影響を与えるような量ではありませんので、心配する必要はありません。

4.私は妊婦です。放射線の影響はありませんか?

妊婦の方におかれましても、他のみなさま方と同じ対応で問題ありません。放射線量として、100ミリシーベルト以下※では胎児への影響(奇形、精神遅滞など)は起こらないと考えられています。 また、胎児へのその他の影響(小児期や成人期のがん)については、生活習慣など放射線以外のものを原因として生じる危険性と比べて、現在の状況で住民の方が受ける可能性のある少量の放射線から 予測される危険性は遥かに小さいと考えられるため、過度に心配する必要はありません。また、安定ヨウ素剤は、薬の一種です。アレルギーなど副作用を起こす可能性がありますので、服用には注意 が必要です。妊娠中の方はご自分の判断で、ヨウ素剤を飲んだり、ヨウ素を含むうがい薬や消毒薬などを飲んだりなさらないようにして下さい。その他、妊婦さんの注意点は、厚生労働省のホーム ページをご参考ください。

厚生労働省「5.妊婦さん、産後まもないお母さんと乳幼児の健康のために」

正しくは胎児被ばく線量が100ミリグレイ以下と表現すべきところですが、全身均一被ばくと仮定して、ニュースなどで用いられているシーベルトを用いた説明とさせていただきました

【汚染検査と除染】

5.放射性物質の除染とは、どのようなことを行うのですか?家でもできますか?

衣服や髪の毛、皮膚などに付着した放射性物質を取り除くことです。衣服を洗濯したり、お風呂に入る、 髪や体を洗うことで放射性物質は取り除くこと、すなわち除染ができます。家庭でも十分に行うことが出来ます。 なお、洗濯やお風呂などに使ったお湯や水は、そのまま捨てて頂いて結構です。

6.避難地域、屋内退避地域の住民ですが、避難する時に着た服や、汚染検査で放射能が検出された服はどうすれば良いですか?

現時点では避難地域、屋内退避地域の住民の方々の服には健康に影響がでるような量の放射線が検出されたことはありません。通常通り洗濯していただき、今後も着ていただいて構いません。

7.被ばくの検査(汚染検査)をしてほしいのですが、できますか?

「福島第一原子力発電所に近い南相馬市中心部の相双(そうそう)保健所では8000人以上を検査したが、除染を必要とする基準値を超えた人はいなかった(3月29日、新聞報道)」と報告されています。 また、放射線医学総合研究所で福島第一原子力発電所等で作業をされた方1300名以上の汚染検査を行いましたが、除染を必要とする基準値を超えた人はいませんでした。以上の状況を考えると、現時点では、 現在もなお避難地域内に留まっている方以外については、被ばくの検査(汚染検査)は必要ないと思われます。福島県内でご心配な方は、県内に10ヶ所程度の放射線検査実施施設がありますので、実施状況を 以下のURLでご確認の上、お出かけください。

福島県災害対策本部「平成23年東北地方太平洋沖地震による被害状況速報」

なお、事故時に福島第一原子力発電所から3km圏内にいらっしゃった方や、福島第一原子力発電所内で作業に当たられた方で、まだ汚染検査をされていない方は、福島県内で汚染検査をしていただくか、 放射線医学総合研究所の放射線被ばく健康相談窓口までご連絡ください。

8.福島県から避難されてきた方を受け入れても大丈夫ですか?

被ばくを心配していらっしゃるのだと思いますが、全く問題ありません。「7.」でもお示ししたとおり、現段階でご自身に除染が必要な方はいらっしゃいません。 またその方を受け入れたからと言って、受け入れた方に影響はありません。温かく迎えてあげてください。福島県から避難されてきた方という理由で、避難所での受け入れ、 医療機関での受診、アパートなどの入居、就職、学校生活等に差別が生じる事の無いよう、冷静なご対応をお願いします。

【飲用水、生活水】

9.3月22日に東京都の金町浄水場の水道水に、1リットルあたり210ベクレルの放射性ヨウ素が含まれていると報道がありましたが、大人は飲んでも大丈夫ですか?料理に使えますか?

大人が飲んでも、健康への影響を心配する必要はありません。金町浄水場の水道水の放射性ヨウ素については、その後濃度が低下し、4月6日時点で不検出(1リットルあたり20ベクレル以下)となっています。 放射性ヨウ素に関する国の安全基準値は、水1リットルあたり300ベクレルです。この基準は、放射性ヨウ素を含む水を長期間摂取し続けた場合でも甲状腺が受ける放射線量が1年当り50ミリシーベルト以下となるように決められています。

現時点ではあまり想定されませんが、例えば、300ベクレル/1リットルの水を大人が毎日2リットル、1ヶ月間飲み続けた場合、約400マイクロシーベルトの被ばくを受ける計算になります。 この値は日本人が自然界から1年間に受ける放射線の量のおよそ4分の1程度で、健康への影響を心配する必要はありません。また、料理に使っても、健康への影響を心配する必要はありません。 安全基準は、料理で使うことも考慮して、健康影響の現れる可能性が小さくなるよう決められています。

10.上記の問いにある水を、シャワーやうがい、歯磨きなどに使っても大丈夫ですか?

水道水を飲用や調理以外の用途で使用しても、健康に影響はありません。

(参考) 厚生労働省:「福島第一・第二原子力発電所の事故に伴う水道の対応について」

11.水道水から放射性物質が検出されたと聞きましたが、知らずに飲んでしまいました。大丈夫でしょうか?

短期間の飲用では、健康上に問題はありません。

12.放射性ヨウ素を含んだ水を沸騰すると、放射性ヨウ素が蒸発すると聞きましたが、本当ですか? 浄水器等で濾過できますか?

放射性ヨウ素は沸騰しても蒸発しないと考えられます。水分が蒸発し、むしろ放射性ヨウ素が濃縮される場合があります。 放射性ヨウ素の除去については、本ホームページ、4月6日の「水道水中のヨウ素-131の除去について」をご参照ください。

「水道水中のヨウ素-131の除去について」

【食品】

13.放射性物質で汚染された食べ物のことが報道されていますが、野菜などを食べる際に気をつける事はありますか?

野菜で検出された放射性物質は、ほとんどすべて、表面に付いていると考えられます。従って、野菜を洗う、煮る(煮汁は捨てる)、皮や外葉をむく、などによって、汚染の低減が期待できます。

14.お店で売っている魚や肉は食べても大丈夫ですか?

放射性ヨウ素およびセシウムについては、野菜同様、出荷の基準値が設けられました。流通している魚や肉は心配ありません。

15.学校給食に使用される野菜は大丈夫ですか?

現在、基準値以上の放射性物質が検出された野菜は出荷が制限されますので、安心して下さい。

16.規制値内の食品であっても少し心配です。妊婦や子どもへの影響はありますか?

これについては、以下の学会の見解を参考にしてください。

日本医学放射線学会「妊娠されている方、子どもを持つご家族の方へ」

日本産科婦人科学会「水道水について心配しておられる妊娠・授乳中女性へのご案内」

【安定ヨウ素剤とヨウ素】

17.安定ヨウ素剤はどのように服用すれば良いですか?

避難所等で配布される安定ヨウ素剤は、医師の指示通りに服用することが重要です。

安定ヨウ素剤は体の中にはいると甲状腺に集積するので放射性ヨウ素が入る前や直後に安定ヨウ素剤を服用し、放射性ヨウ素の取り込みを阻害したり、希釈して甲状腺への影響を低減させようとするものです。

しかし、ヨウ素剤の服用によってはアレルギーなどの副作用をおこす場合もあります。また、安定ヨウ素剤は、放射性ヨウ素が体の中に入った場合のみに有効で、外部被ばくや他の放射性核種には効果がありません。

従って、服用の必要があるかないかは、環境中への放射性ヨウ素の放出量から受ける被ばく量を推定し、医学的観点から決定すべきものです。

18.一度体内に取り込まれた放射性ヨウ素はどうなるのでしょうか?

放射性ヨウ素は呼吸や食べ物を通じて体内に入り、血中に移行します。血液中に入ったヨウ素の10〜30%は甲状腺に蓄積されますが、その割合は、放射性でないヨウ素の摂取量に左右されます。 甲状腺に取り込まれた放射性ヨウ素は、一生涯そこに留まるわけではなく、少しずつ体外に排出されます。また放射性ヨウ素は少しずつほかの物質に変化し、放射線を出す能力が約8日で半分に減ります。 80日目には放射線を出す能力が1000分の1以下となり、ほとんど検出されなくなります。

19.東京に住んでいます。これから福島県でボランティア活動をしたいのですが、被ばくが心配です。安定ヨウ素剤は入手できますか?

安定ヨウ素剤は医師が処方する薬で、通常この様な目的では処方されません。 また現時点で、東京電力福島第一原子力発電所内で作業するなどの場合を除き、安定ヨウ素剤は不要です。

20.安定ヨウ素剤に代わるものはありませんか? カリウムがよいと聞きましたが、バナナを食べるのはどうでしょうか?

現時点では、代わりになるものはありません。カリウムもヨウ素とは化学的性質が異なりますので、安定ヨウ素剤の代わりにはなりません。

21.私にはヨードアレルギーがあります。安定ヨウ素剤は飲めないのでしょうか? 量を減らしても駄目でしょうか?

ヨードアレルギーの方には、投与できません。少量でもアレルギーが出る可能性があります。

22.私は橋本病(慢性甲状腺炎)と診断されており、特に加療はしていませんが経過観察中です。今回の原発事故で放射性ヨウ素のことがよく言われていますが、病気への影響はありませんか。

食品や水の摂取制限を守って頂く以外には特段ご注意頂く点はありません。

23.私は甲状腺機能亢進症で加療中ですが、水道中の放射性ヨウ素の影響は大丈夫でしょうか?

放射線の観点からもヨウ素の濃度の観点からも、現在のレベルは、病気への影響が懸念されるレベルではありません。

24.布団を4時間くらい外に干しました。甲状腺の手術の既往がありますが、その布団に寝ても大丈夫でしょうか?

大気中の放射性ヨウ素の影響を心配していらっしゃるのだと思いますが、全く問題がありません。

【報道を巡って】

25.報道で伝えられる数値の意味を教えて下さい。

100,000cpm(双葉避難所で避難住民の靴から測定された値)

報道で伝えられている100,000cpmについて、一般的に放射線測定に使われているGMサーベイメータで測定したと想定した場合、表面汚染レベルは、400Bq/cm2となります。ただし、測定する機器が異なった場合には、有感面積・機器効率が違うため、計算結果は同じにはなりません。

核種をヨウ素-131と想定し皮膚に付着した場合には、皮膚の吸収線量率の試算は次のとおりです。
皮膚表面汚染密度1Bq/cm2あたりの皮膚吸収線量率(nGy/h)は、ヨウ素-131の皮膚の深さ70μmのとき、係数は1319(nGy/h)/(Bq/ cm2)となり、皮膚(深さ70μm)の吸収線量率は0.53(mGy/h)となります。
皮膚の除染を行うことにより、吸収線量率はさらに小さくなります。

1015マイクロシーベルト/毎時(3月12日午後 福島原子力発電所正門付近で測定された空間線量率の値)

これは、この場所に1時間居つづけると、1015マイクロシーベルト(1.015ミリシーベルト)の被ばくとなります。

原子力発電所に関して定められた一般の方の一年間の線量限度は1ミリシーベルト/年です。しかしこの限度量を超えたからといって、健康影響があらわれるというものではありません。一般に生活しているだけで、自然界から被ばくしている線量は、1年間で2.4ミリシーベルトです。世界の高線量地域では年間で10ミリシーベルトという場所もあります。

26.東京電力福島第一原子力発電所の敷地内で微量のプルトニウムが検出されたようですが、健康への影響はありませんか?

プルトニウムは元々自然界にはほとんど存在しない核種です。しかし、現在では微量ですが土壌中に普通にあります。 これは1950から1960年代に盛んに行われ、その後1980年代まで続いた大気圏内の核実験に由来するものです。 これが、土壌に吸着されて未だに残っているわけです。今回、測定されたプルトニウムは微量で、普通の土とほぼ同じレベルであり、この程度であれば、健康への影響はありません。

プルトニウムはセシウムやヨウ素のように気化することはありません。よって現時点では健康に影響が出るような量のプルトニウムが広範囲に飛散する事はありません。 ただ、今後の調査により、海側も陸側も、その汚染の広がりを慎重に確認していく必要があります。

27.放射線の健康への影響に関する日本の安全基準は、世界のほかの国に比べてどうなのですか?

わが国の定めた基準は、国際放射線防護委員会の勧告に基づき、国際機関が定めたものと同じか、もしくはより厳しい基準に定められています。

【基本事項】

28.放射線の単位

シーベルト(Sv)

人体が放射線を受けた時、その影響の度合いを測る物差しとして使われる単位。
なお、1シーベルト=1,000ミリシーベルト=1,000,000マイクロシーベルト
1ミリシーベルト=1,000マイクロシーベルト

ベクレル(Bq)

放射能を表す単位。1ベクレル(Bq)は、1秒間に1個の放射性核種が崩壊することです。

グレイ(Gy)

放射線が当たった物質が吸収した放射線のエネルギーで表される放射線量。1Gyは物質1kg当たりに1ジュール(J)のエネルギーが吸収されることを意味する。

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