5. これまでの治療成績 (安全性および有効性)
1. 安全性について
局所進行子宮癌に対しては、1995年6月から4つの臨床第I/II相試験(プロトコール9403(子宮I)、9702(子宮II)、9704(子宮腺癌)、9902(子宮III))をのべ107例の患者様に行い、本疾患に対する炭素イオン線治療の安全性と有効性を検討してきました。その結果、子宮頸部から骨盤リンパ節領域を含む広い治療範囲への36.0 GyE/12Fr〜48.0 GyE/16Frの照射は、高度の急性反応(Grade 3以上の吐気、食欲不振、下痢、膀胱炎、皮膚炎など)を発生させることなく安全に施行しうることがわかりました。一方、これらのプロトコールで治療を受けた症例のうち、Grade 3-4の遅発性反応を来した症例(消化管に穿孔を来し人工肛門造設などの外科的処置を要した症例)が8例出現しました。これらの症例はいずれも極度の進行癌で、穿孔を来した腸管と腫瘍が近接していたため、結果的に腸管への高線量投与が避けられなかったことや、コントロール不良の糖尿病を合併していたことなどが原因と考えられました。投与線量の解析の結果からは、消化管に対する重篤な遅発性反応の発生を抑えるためには、消化管の線量を60.0 GyE未満に抑えるべきであることが明らかとなりました。幸いなことに、8例中、1例の局所再発と2例の他病死が生じた以外は、その後長期にわたりご健在です。これらの結果に基づき、標的に絞り込んで治療計画を複数回行う照射法に改良した結果、現在では重篤な反応の発生は認められなくなりました。また、軽度の消化管出血の頻度も20%以下に減少しています。
2. 腺癌に対する有効性について
子宮腺癌に対する炭素イオン線治療は、切除不能もしくは手術拒否例であるII期、III期、IVA期を対象としています。照射方法は、子宮と骨盤リンパ節領域に対する広範囲に対しては36.0 GyEの照射を行い、続いて行われる子宮腫瘍部に対する照射を段階的に線量増加させていく形で行われてきました。子宮腫瘍部に対する総線量が62.8 GyEから71.2 GyEまで増加されるに伴い、局所の治療効果も良好となっています。子宮頚部腺癌26例においては、3年局所制御率74%、3年生存率64%と経過観察期間が短いながらも良好な成績が得られています。また、子宮の中心部再発であれば救済手術を行うこともあり、その場合も含めた局所制御率は82%となっています。これは,生物学的線量分布の良さによるもので、炭素イオン線は子宮腺癌に対して大いに期待できると考えられます。
3. 扁平上皮癌に対する有効性について
子宮扁平上皮癌に対する炭素イオン線治療は、従来の治療法では制御困難とされる局所進行性の腫瘍を対象に、3つの臨床試験が行われました。第1の第I/II相試験(プロトコール9403)では、全骨盤照射と局所限局照射ともに線量増加を行いました。線量増加とともに局所制御率の向上が得られましたが、同時に高線量照射群のなかから消化管に穿孔を来す症例も出現しました。この結果に基づき計画された第2の第I/II相試験(プロトコール9702)では、全骨盤に44.8GyE/16回/4週照射した後、子宮病巣に限局した照射線量(8回/2週)を段階的に増加するという方法をとりました。その結果、消化管の副作用は明らかに減少し、局所制御率も向上しました。これら2つの臨床試験から、直腸・S状結腸の耐容線量は57.6〜62.4GyEであることが分かりました。第3の第I/II相試験(プロトコール9902)では、骨盤リンパ節領域の線量を39GyE/13回、子宮病巣の総線量を54GyE/5回に固定して照射後、さらに消化管を外して子宮病巣中心部のみに絞って2回の照射を行うという、より細かな照射方法に改良されました。その結果、周囲消化管の安全性を保ちながら、腫瘍中心部の投与総線量は64.0GyEから72.0GyEまで増加することが可能となりました。第2、3の臨床試験で治療された症例を合計した35例(腫瘍径の中央値6.5cm)の線量別にみた局所制御率は、64.0-68.8GyE群では14/23例(61%)、72.0-72.8GyE群では11/12(92%)と線量増加とともに成績の向上が得られていました。一方、局所が制御されても遠隔転移が出現する症例が多く見られました。初回再発部位をみると傍大動脈リンパ節が29%を占めており、治療開始時にすでに同部位に潜在的な転移があったと推測されました。米国の臨床試験では、傍大動脈領域に予防的に照射することで生存率の改善が得られていることから、第4の第I/II相試験(プロトコール0508)では、プロトコール9902に加えて傍大動脈領域の予防照射を加えて、その安全性や有効性を調べています。
- 受診から治療までの流れ
- 子宮頸部扁平上皮癌 (略称子宮IV) の適応について
プロトコール番号0508
適格条件・不適格条件 - 子宮頸部および体部腺癌 (略称子宮腺癌) の適応について
プロトコール番号9704
適格条件・不適格条件 - 線量分布と症例
- これまでの治療成績 (安全性および有効性)


