適応となっている疾患について

I. 肝細胞がん

1. 肝細胞がんの特徴、重粒子線治療の研究の背景、既存の治療法

わが国では、肝細胞がんの約85%が慢性肝炎や肝硬変などの慢性肝疾患を合併しています。とりわけ、それ自体が高度の肝障害である肝硬変に発生することが多いため、がんを治すことだけにとらわれると、肝機能を低下させ、結果的に生命を脅かす危険を常に伴っています。また、一旦治療が成功した場合でも、肝細胞がんの発生母地である肝硬変を合併する限り、新たな発がんの機会にみまわれることになります。したがって、その治療には狙った腫瘍を治せること(根治性)と、侵襲が低く、次回の治療に耐え得る肝機能を温存できること(低侵襲性)が求められます。

今、実際に行われている代表的な治療法は、肝切除療法:がんそのものを除去する、肝動脈化学塞栓療法(TACE):がんの栄養血管を塞栓する、経皮的エタノール注入療法(PEI):エタノールを注入して凝固壊死させる、ラジオ波焼灼療法(RFA):ラジオ波で熱凝固させる、です。それぞれの利点と欠点をあげると、肝切除療法は、がん細胞を取り除く最も確実な方法ですが、肝、全身への負担が大きくかかります。TACEは安全で比較的侵襲が低く有用な治療法ですが、根治性に限界があります。PEIやRFAは簡便で根治性の高い治療法ですが、比較的小さいがん(3cm以下)に効果が限られます。

肝細胞がんの治療として放射線治療を行うことは、放射性肝障害の問題からこれまでは困難であると考えられていました。しかし、最近では照射機器の進歩に伴い局所に限った照射が可能となったことから、肝臓に対する放射線治療の研究が進んでいます。高エネルギーX線は、単独療法から始まり、他治療と併用して根治性を高める研究が行われています。陽子線および炭素イオン線に代表される重イオン線は線量集中性が高く、病巣への選択的照射治療が可能です。近年、陽子線治療の高い治療効果が報告され、この優れた線量分布の有用性が明かとなりました。重イオン線は、高い線量集中性に加えて陽子線やX線よりも高い生物効果(細胞致死作用)を有するため、さらに高い治療効果が期待でき、根治性と低侵襲性とを兼ね備えた新しい治療法として期待されています。


I. 肝細胞がん

当院を受診していただくに際して

  1. 肝細胞がんの特徴、重粒子線治療研究の背景、既存の治療法
  2. 重粒子線治療研究の経緯および現状
  3. 重粒子線治療の方法
  4. 臨床試験の治療成績
  5. 先進医療の適応条件と、今後の展望
  6. 治療計画用CT画像と重粒子線の線量分布図
  7. 治療前後の実際のCT画像(3症例)
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